「ビジュアルシンカーの脳」という本について

ビジュアルシンカーの脳の話題

テンプル・グランディン著の「ビジュアルシンカーの脳」という本をゆる言語学ラジオで知り、とても興味深い内容だったので買って読んでみました。すごく面白く、そして読みやすい本で、それなりの厚さがある本ではありますがあっという間に全部読んでしまいました。この本の内容に沿うなら僕は空間視覚思考(パターンや概念で思考する)が強い脳を持っているということになりそうです。

ところで、この本についての話題をしているYouTube動画を、3つのチャンネル(ゆる言語学ラジオゆる学徒ハウス別館ロボマインド)で見ましたが、言語思考者と視覚思考者に分かれている話になると、視覚側はほとんど物体視覚思考者の話に終始しています(ゆる言語学ラジオでは空間についても少し触れていましたが)。他のネットメディアも軽く見てみましたが、やはりビジュアルシンカーを語るときは物体視覚思考者を前提にするものが多い印象です。

この本の著者であるグランディン自身が物体視覚思考者であるため、本自体に空間視覚思考者への言及が少ないのも原因かもしれません。

自分はどれか選ぶとしたら空間視覚思考者

この本の主張を可能な限り簡潔にまとめると、「思考のタイプには3つの種類がある。まずは言葉で考える人(言語思考者)。次に、画像で考える人(物体視覚思考者)と抽象的な情報で考える人(空間視覚思考者)である。後者2つはビジュアルシンカーと呼ばれる」ということです。
そして、ビジュアルシンカーは言語思考者と比べると社会的に不利な立場である、とも主張されています。

この3つのタイプははっきりと分かれるものではなく、グラデーションになっています。「完全に言語思考」「完全に視覚思考」というわけではなく、どれが強くどれが弱いかという話です。厳密に分けることはできません。この本には18問からなるビジュアルシンカー判断テストがあり、(学術的に厳密なものではなく、雰囲気としてどっち寄りなのかが分かる程度のものですが)、僕は18問中11問にYESと答えました。つまり、まあまあ視覚に寄っている方だということです。

ただ、僕は考えるときに画像や映像を扱うのがひどく不得意です。地図があっても方向音痴だし、自分で納得のいく絵を描けたこともありません。

空間視覚思考者はあまり「視覚」とは関係ない気がする

(ここは僕自身の話です。空間視覚思考者でも違う考え方の人もいるでしょう)

「空間視覚思考者」とは言いますが、頭の中では抽象的なふわっとした情報を抽象的なままに考えています。その時に役立つのは、考えることについてのマクロな視点(全体の構造)とミクロの視点(部品の役割)です。無理に言語化しても正直自分でもピンときません。ベン図や相関図で考える、という感じですが、それ自体を使っているわけではありません。

言葉通りの「空間を考える力」で言うと、実は相当苦手です。初めての町ではすぐに迷子になるし、数学の図形問題もすごく苦手です。

僕にとって考えやすいのは、パターンの反復と差異の構造を見つけることや、物事を一旦抽象的なものにしてから類推することです。この本では空間視覚思考者は「音楽や数学が得意」と書いてあり、ある程度納得できます。 僕は数学が相当苦手ですが、その理由は「公式の丸暗記ができない」「暗算が遅いし間違いが多い」「高校数学後半あたりから、似た文字の記号が増えて、記号と意味の対応が覚えられなくなった」などです。公式の丸暗記については、学生生活が終わってから「導出できるから別に覚えなくてもいい」と知りましたが、遅すぎた。

その他、この本に関すること

この本自体が、どちらかというと実証主義的な立場ではなく、グランディンの個人的な体感に由来する内容が多いように感じます。それはそれで良いですし、読んでいて興味深く、知的好奇心を駆り立てる内容なことには変わりないです。
ですが、「この本の内容をどれだけ真に受けて大丈夫なのか?」という問いは、僕の中で頭の中にずっと引っかかっています。もちろん科学的な実証を徹底した内容に基づいた本であれ100%鵜呑みにはできませんが…。

…という疑問は残りつつも、全体を通して普段の生活では気付けない視点からの話がてんこ盛りで、夢中になって読める本です。

僕は言葉を使う時、特に話したり書く時には脳にかなり高い負荷がかかってる気がしてならないと結構前から思ってましたが、この本を読むことで「頭の中の思考を翻訳しないと言葉にならないからなのではないかな」という仮説が立ちました。
この仮説を実証する方法は、まあよくわからないです。

「空間視覚思考者」の情報がもっと欲しい

著者のグランディンが物体視覚思考者であることや、ビジュアルシンカー、視覚思考者というネーミングの影響もあり、視覚思考者について語られるときに物体視覚思考者の話に偏ってしまうことが、個人的に残念に思います。

僕自身、「空間視覚思考者っぽい人」に出会ったことがないし、ネットで探してもなかなか情報が得られません。自分自身について知りたくても知れないモヤモヤ感があるので、空間視覚思考者という存在についてももっと認知されていってほしいと思います。

また、「空間視覚思考者」というネーミングにも疑問を感じます。視覚的な情報を必ずしも使うわけではないからです。
少なくとも僕は、いわゆる画像のような情報は全然使ってないです。
3次元の図形問題がすごく苦手なのは言語思考者の堀本さん(ゆる言語学ラジオ)と共通しています。なんなら2次元でも苦手。

しかし、やっぱり自分の頭の中が言葉中心で動いていませんから、思考そのものを言葉で伝えるのってすごく難しいんですよね。難しいというか無理ゲーレベル。だけど「僕は言葉で考える者ではないので…」と言って言語から逃げてしまうのも、それはそれで良くない気がする。

最近はChatGPTと雑談してると脳内の謎の概念を言語化できるなんてこともありますから、文明の利器の力を借りるのが1つの手かもしれませんね。

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