初めて聴いたときには度肝を抜かれ、今でも聴くたびに(良い意味で)平常心で居られななくなる。
そんな曲って実際のところ本当に少ない気がするのですが、自分にとってそんな曲なのが、ミーチャ・ニキシュのピアノ協奏曲です。
曲の概観
1936年の作品ということで、協奏曲とはいえかなり自由度の高い楽曲構成となっています。
第1楽章:Andante e Romanza (ロ長調 – 嬰ヘ短調)
第2楽章:Scherzo – Allegro molto (ニ短調)
第3楽章:Phantasie Pathetique – Moderato (ホ短調)
という緩 – 急 – 緩の構成で、どの楽章もあまり形式的には捉えにくい内容になっています。
第1楽章はまさに後期ロマン派という感じのアンダンテ。甘美ではありながら悲しげな響き。
第2楽章は短いスケルツォで、あまりピアノは目立ちませんが、一瞬だけジャズの即興演奏のように入ってくる。
第3楽章はここまでの展開からは想像のつかない悲劇的フィナーレ。この楽章を聴いたときは本当にびっくりした。
幻想曲なだけあってかなり捉えにくい展開をしますが、序章部分や、その後のホ短調のフレーズなどにいくつか軸としてるであろうモチーフがあるお陰で聴いた感じの統一感はしっかりあります。
感想
たった1曲のピアノ協奏曲の中で、これだけの多彩な表情を見せつつもしっかり統一感を持たせる構成力に驚くし、
の譜面を見る限り技術的にとんでもなく難しいピアノパートをしっかりと弾きこなしているソリストのハワード・シェリーの力量にも驚きました。
そして特に3楽章のオーケストレーションの大胆さには本当に脱帽。
IMSLPを見たら楽器編成がすごいことになってました。そりゃそうなるか…
楽器編成
フルート3 (第2,第3はピッコロ持ち替え), オーボエ2, イングリッシュホルン, クラリネット2(C), クラリネット2(B♭)
バスクラリネット1(B♭), バスーン2, コントラバスーン1
ホルン4(F),トランペット4(B♭/C),トロンボーン4,チューバ1
ティンパニ,トライアングル,バスドラム,シンバル,スネアドラム,タンバリン,木琴,鉄琴,チェレスタ,ハープ,ギター
弦五部
バスクラリネットとかコントラバスーン居るのはまあ時代が時代として、ギターって….
とはいえこの曲、現代から見たら和声的にも編成的にも、そして楽器の奏法の面から考えてもそんなに変なことはしてない、という視点もあるにはあると思うんです。
だけども、すごく奇抜なことをしている曲、たとえば無調だとか非12平均律、特殊奏法や偶然性の音楽みたいな曲にはじめて触れた時とはまた別の驚きをこの曲には覚えました。
初めてこの曲を最初から最後まで聴いた時、しばらく頭の中が空っぽになって何も言葉が出てこなくなるような感覚だったんです。
ただただ圧倒された…というか。
好きな場所
Youtube動画だと30分00秒あたりの、第3楽章のクライマックスに向かうところのピアノパート。
独特のハーモニーと豪快なサウンドが、一回聴いただけでずっと耳に残っています。
自分で作る曲でもこんな感じのことできたら面白そう…って思う。
ピアニストにとってはとてつもなく大変そうな譜面だと思う。
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